利賀を彩った人々PEOPLE

 1911年~1999年。
元北陸経済連合会会長。元北陸電力取締役相談役。

 

わが友は利賀山房主人
私が鈴木さんに初めてお会いしたのは、六、七年も前のことになろうか。富山県の教育関係の審議会か何かに鈴木さんが引っ張り出された折のこと。当時「早稲田小劇場」と称していた「劇団SCOT」が富山県でも岐阜県境に近い利賀村に活動の拠点を移したことは私も耳にしていたし、その主宰者が鈴木さんで、世界的に高名な演出家であることも聞き及んでいた。しかし、正直なところ、お会いする前は〈何を好き好んで山峡の村に移って来られたのか。よほどの変人か奇人にちがいない〉などど思っていたことを白状せざるをえない。が、じかにお会いしてみると真面目な、常識も豊かな紳士であった。その後、中沖豊・富山県知事に改めて紹介され、以来、友人として親しくお付き合いいただいている。
 私自身演劇についてはまったくの素人であり、鈴木さんの作品、「SCOT」の公演について何も語る資格もないのだが、ただ毎年夏に利賀村で開かれる「世界演劇祭」を拝見するたびに感じるのは、なんと激しく、なんと気迫がこもっていることか、ということである。普段は温厚そのもの。飲むとまた楽しい鈴木さんの秘められた一面を見る思いがする。
 富山に「国際的文化」の風を吹き込み続けている鈴木さんに感謝するとともに、老友として一段のご活躍を期待する今日この頃である。
(プレジデント 1988.1)